沖縄が米軍の占領下から日本に復帰した年、八重山諸島小浜島に暮らす古波蔵恵文(堺正章)とその妻・勝子(田中好子)夫婦は元気な女の子を授かる。おばぁのハナ(平良とみ)も大喜び。それから11年後、「恵里(えり)」と名づけられたその女の子(浦野未来)は小学5年生となった。ある晩、農業のかたわら民宿「こはぐら荘」を営む古波蔵家に東京から宿泊予約の電話が入る。恵里にとって初めての「お客さん」がくるのだ。
東京から民宿「こはぐら荘」にやってきたのは、上村静子(真野響子)と中学1年の長男・和也(遠藤雄弥)、小学6年の次男・文也(山内秀一)の親子連れ三人組だった。恵里(浦野未来)と弟の恵達(村上雄太)は、はじめてのお客に大はしゃぎ。夕食の席では、恵文(堺正章)が弾く三線に合わせて恵里が琉球舞踊を披露し、上村親子も大喜びする。だがその夜、静子は上村家の抱える複雑な事情を勝子(田中好子)に吐露する。
上村親子がやってきて一週間、今日は和也(遠藤雄弥)と文也(山内秀一)の父・上村伸生(勝野洋)が東京から小浜島にやってくる日だ。恵里(浦野未来)はふたりをガジュマルの森へ案内し、精霊キジムナーの話を教える。ふと、和也が怪我をした小鳥を見つけた。なんとかその小鳥を追いかけ木の上に登る恵里。だが捕まえた瞬間、うっかり足を踏みはずしてしまう。落ちる恵里!それをとっさに受け止めたのは病弱な和也だった。
上村親子が勢ぞろいした食卓で、恵理(浦野未来)は和也(遠藤雄弥)に「小浜島にいれば、病気なんて治ってしまう」と励ます。だがそれを耳にした和也の母・静子(真野響子)は激しく動揺し泣きだす。その晩、意を決した勝子(田中好子)は恵里に、和也が不治の病だと告げる。和也が死ぬ…ショックを受ける恵里。翌朝、そんな恵里の前に精霊キジムナーが現れる。それは恵里を元気づけようと全身を扮装した、和也の姿だった。
和也(遠藤雄弥)の希望で、皆で無人島に遊びに行くことになった。大喜びで海に入りはしゃぐ和也。その元気な姿を焼き付けようと、母・静子(真野響子)は涙をこらえ必死でカメラのシャッターを押す。夜、恵里(浦野未来)が和也と文也(山内秀一)と一緒にたき火を囲んでいると、突然、和也が「お前たちさ、いつか結婚しろよ」ともちかける。導かれるように「いいよ」と答える恵里。小浜島に帰って数日後、ついに和也が倒れる。
ついに和也が旅立った。恵里(浦野未来)と文也(山内秀一)は、「和也の木」と名づけたガジュマルを植え、和也の言葉の通りいつか結婚しようと約束する。静子(真野響子)と文也が東京に帰る日、恵里が文也に手作りのミンサー織りのお守りを贈ると、文也は恵里にきれいなスーパーボールをくれた。文也を乗せた船が港を離れていく。恵里はたまらず駆け出し船を追いかけ、防波堤の突端で、思いの丈を叫ぶのだった。
1990年、古波蔵恵里(国仲涼子)は高校3年生になった。古波蔵家は那覇に移り住み、父・恵文(堺正章)はタクシー運転手として、母・勝子(田中好子)は市場で働き家計を支えている。部活では野球部のマネージャーとして励む恵里だったが、自分自身がやりたいことはまだ見つかっていない。将来きっと文也と結婚する日がくる、その想いだけが支えだった。そんな古波蔵家に不肖の長男・恵尚(ゴリ)が久しぶりに顔を見せる。
久しぶりに古波蔵家に帰ってきた長男・恵尚(ゴリ)が母・勝子(田中好子)を手伝って市場で配達していると、観光客が沖縄特産の苦瓜・ゴーヤーを指して「かわいい」と話すようすを見かける。一方、恵里(国仲涼子)は野球部の一回戦に帯同し、見事強豪を撃破。勝利の報に盛り上がる古波蔵家、そこへ恵尚が駆け戻り、新しい土産物のアイデアを思いついたと語りだす。その名も「ゴーヤーマン」、ゴーヤーを模した人形だった。
「ゴーヤーマン」をつくることを思いついた長男・恵尚(ゴリ)、資金は家族に出してほしいと説得を続ける。恵尚の計画だと、最初は土産物として売り出すが、人気が出るにつれ、グッズ展開、さらにマンガやアニメ化を目指すという。父・恵文(堺正章)と恵里(国仲涼子)は次第に恵尚の饒舌な語り口に乗り気になるが、母・勝子(田中好子)や祖母・ハナ(平良とみ)、とくに末っ子の恵達(山田孝之)はそう簡単に信じられない。
いよいよ古波蔵家総出での「ゴーヤーマン」プロジェクトが始まった。長男・恵尚(ゴリ)はやる気満々で家を飛び出し試作品づくりにとりかかる。一方、快進撃を続ける野球部では、恵里(国仲涼子)がキャプテンに「甲子園に行けたらキスしてもいい」と約束したことが元で摩擦が生れていた。その夜、恵達(山田孝之)は金城ゆかり(ベッキー)を追いかけるうちに外国人が屯するライブハウスに紛れ込んでしまう。
いよいよ「ゴーヤーマン」の販売がはじまった。古波蔵恵里(国仲涼子)も父・恵文(堺正章)もなんとか売り上げようと長男・恵尚(ゴリ)に同行して宣伝に協力する。一方、母・勝子(田中好子)は親戚の助力を得ようと頭を下げていた。その夜、家族会議の席で恵尚は58個も売れたと大喜び。だが、家族や親戚が買った数をのぞくと実質的に売れたのはたったの8個。そこで、おばぁ・ハナ(平良とみ)の発案で古波蔵家は勝負に出る。
ついに決勝に進んだ野球部、古波蔵恵里(国仲涼子)もスタンドから熱い声援をおくる。父・恵文(堺正章)、母・勝子(田中好子)たち家族もみな、球場に駆けつけた。長男・恵尚(ゴリ)は全身をゴーヤーマンの姿に扮装し、売り子として球場内を売り歩く。だが、野球部は惨敗。それでも同窓会長・石嶺高(具志堅用高)らOB達は健闘を称えた。一方、売れ行き好調と勘違いした恵尚はさらに在庫を五千個追加発注してしまう。
切羽詰まった古波蔵家、恵里(国仲涼子)、恵尚(ゴリ)、恵達(山田孝之)は観光地に出かけてにわかゴーヤーマン・ショーを繰り広げる。しかし在庫は一向に減らない。実は今まで売り上げが順調に見えたのは、勝子(田中好子)が実家に頼み込んで買ってもらっていたからだ。その現実を伝えるべきか悩む勝子、だがハナ(平良とみ)は傷つくだけだから黙っておけと諭す。翌朝、ゴーヤーマンの売上金とともに、恵尚が忽然と姿を消す。
突然の長兄・恵尚(ゴリ)の失踪。そこへゴーヤーマンの製造元・島袋正一(川田広樹)が、請求書をもって現れる。簡単に返せる額ではなかった。母・勝子(田中好子)はひとり責任を感じ、恵文(堺正章)とおばぁ(平良とみ)に謝る。実は、恵尚は勝子の前の恋人との間に授かった子だった。恵文は事情を知った上でプロポーズしたのだという。そんな父を、恵里(国仲涼子)も恵達(山田孝之)誇らしく思うのだった。
甲子園の夢もついえ、恵里(国仲涼子)はようやく卒業後の進路を考え始める。受験して文也のいる東京の大学に進学しようと思いついた恵里は、その費用を工面しようとバイト雑誌を抱えて帰宅。すると弟の恵達(山田孝之)も同じバイト雑誌を買って帰ってくる。恵達の目的はエレキ・ギターと、憧れの金城ゆかり(ベッキー)だ。そのバイト先で恵里はかつての民宿・こはぐら荘のパンフレットを持つひとりの女性(余貴美子)と出会う。
池端容子と名乗るその女性(余貴美子)は、東京の旅行代理店から出張中だという。だが沖縄が好きになれず仕事がままならないと恵里(国仲涼子)にこぼす。そこで恵里はタクシー運転手の父ならきっと力になれると恵文(堺正章)を紹介する。恵文はすっかり容子が気に入り、タクシーで街を案内して回るが・・・。東京を目指し受験勉強を始める恵里。ギターが欲しくてバイトを始めた恵達(山田孝之)。それぞれが隠し事を抱えていた。
いつになく仕事熱心な古波蔵恵文(堺正章)。妻の勝子(田中好子)は恵里(国仲涼子)や恵達(山田孝之)がバイトに励む姿を見て自分もやる気になったのではと期待をかける。だが、おばぁのハナ(平良とみ)は、良からぬ理由があると見抜いて、恵文のタクシーを呼び出す。勝子も次第に恵文の行動を怪しむようになる。その夜、恵里が参考書を買いに本屋に行くと、夜の街をタクシーで走り去る恵文と池端容子(余貴美子)を目撃する。
池端容子(余貴美子)が父・古波蔵恵文(堺正章)に好意を抱いていると勘違いした恵里(国仲涼子)は、池端の職場に乗り込み問い質す。だが容子にはまったくそのつもりがないようで一安心。一方的に好意を抱く恵文は容子を勝子(田中好子)が働く市場に案内し、そこで勝子に容子との関係を見られてしまう。隠し事をしないでと恵文に詰め寄る勝子。そんな母と家族に恵里は、今までバイトをしていた理由を明かすことにする。
「東京に行きたい」恵里(国仲涼子)の突然の告白で騒然とする古波蔵家。もはや恵文(堺正章)の浮気疑惑はどこへやら。どさくさに紛れて恵達(山田孝之)もロックを始めると告白するがそれどころではない。さっそく勝子(田中好子)が恵里を問いただすが、やがて池端容子(余貴美子)の話になり勝子と恵文が言い争う。するとおばぁ(平良とみ)が沖縄の言葉で激しくまくしたてる。おばぁは、家族の大切さを訴えたかったのだ。
翌日「おじいのところへ行きます」とメモを残しておばぁ(平良とみ)がいなくなる。恵文(堺正章)の指示で恵里(国仲涼子)と勝子(田中好子)がおじいの墓がある小浜島へ飛行機で向かう。だが、墓におばぁの姿はない。不安な恵里と勝子の前に、船でやってきたおばぁが笑顔で現れる。ほっと一安心する古波蔵家の一同。恵里は久しぶりの小浜島で星空を見上げ、東京に行けば沖縄の良さをよりわかるのだろうと思いをはせる。
小浜島で恵里(国仲涼子)は文也とふたりで植えた樹を見に行く。そこへ現れた勝子(田中好子)が恵里に、東京に行きたいのは文也のことがあるからではないか、と問う。照れる恵里。三人が小浜島から帰ると、古波蔵家では再び家族会議が開かれた。そして恵里の受験はどうせ受からないだろうという打算から、認められることに。その夜、野球部のキャプテン(宮良忍)が恵里を訪ねてくる。どうしても伝えたいことがあるのだという。
恵文(堺正章)の浮気問題は、沖縄を嫌いなまま帰ってほしくない恵文の親切心ゆえ、ということで決着がついた。池端容子(余貴美子)も東京に戻ることが決まる。恵里(国仲涼子)は気をきかせ、恵文とのお別れの場を用意する。すると容子は唐突に恵文の頬にキス!人との別れが苦手な容子の照れ隠しだった。容子が東京に戻り、恵里は東京に行く決意を新たにする。いよいよ受験の日が迫っていた。
受験の前日、恵里(国仲涼子)が東京にやってくる。はじめての高層ビル、はじめてのスクランブル交差点、はじめての山手線…。都会を目の当たりにした恵里の興奮は止まらない。この日の宿は池端容子(余貴美子)が暮らすアパートだ。まだ仕事中の容子から鍵を預かり、一足先にそのアパートへ向かう。その名も「一風館」。恵里はさっそく廊下ですれ違った住人・城ノ内真理亜(菅野美穂)に容子の部屋がどこかを訪ねてみるが…。
受験の朝、恵里(国仲涼子)は子どもの頃に文也からもらったはがきにある住所を訪ねてみる。だがその家には違う名の表札が。隣人の話では、和也が亡くなってから三年後に父親が事故で亡くなり、引っ越して行ったという。一方、小浜島に墓参りに来ていたおばぁ(平良とみ)は、恵里が文也と植えた樹の前でひとりの青年が佇んでいるのを見かける。それは上村文也(小橋賢児)だった。東京ではいよいよ恵里の入学試験が始まる。
小浜島でおばぁ(平良とみ)と再会した文也(小橋賢児)は、古波蔵家が那覇に引っ越したとようやく知る。東京への帰りの便の時刻が迫り、急ぎ駆けていく文也。おばぁが恵里は今東京にいると伝えようとするが、その声は届かない。一方、東京で入学試験を終えた恵里(国仲涼子)は、合格発表の結果を池端容子(余貴美子)に見に行ってもらうことを頼み、帰宅することに。交差点に差し掛かったとき、恵里の目の前に現れたのは…。
恵里(国仲涼子)は東京の街中で文也(小橋賢児)とすれ違った気がして、那覇に戻ってからも気になってしょうがない。思い出すのは、子どもの頃結婚を約束した小浜島での思い出の数々。一方、家族は恵里の浮かぬ顔を見て、試験がうまくいかなかったのではと心配する。そこへ小浜島から戻ってきたおばぁ(平良とみ)が、文也と会ったことを報告する。恵里は文也と運命の糸でつながっているとますます確信するのだった。
合格発表の日、かわりに結果を見に行ってくれた東京の池端容子(余貴美子)から沖縄の恵里(国仲涼子)のもとへ電話で連絡がくる。結果は不合格だった。きっと文也がいる東京に行けると信じていた恵里は、これからどうしたらいいかわからなくなる。なんとか元気を取り戻してもらおうと、父・恵文(堺正章)母・勝子(田中好子)そしておばぁ(平良とみ)の3人は、恵里を外食に連れ出す。そこで恵里は自分の思いを家族にぶつける。
大学に落ちてもやはり東京に行きたいと言い出した恵里(国仲涼子)。家族の前で、東京に行きたいのは、文也と会いたいだけではない。東京で自分のやりたいことを探す、と熱く訴える。父・恵文(堺正章)と母・勝子(田中好子)は娘が何の算段もなく東京に行くことを強く反対するが、おばぁ(平良とみ)は自分も昔、沖縄を出て海の向こうの世界を見てみたくて家出した過去を語り、理解を示す。恵里の卒業の日が近づいていた。
卒業式の夜の食卓で、恵里(国仲涼子)は卒業証書を家族に披露する。そろそろ寝る、と立ち上がる恵里。それを見送る家族は明日、恵里が出ていくことを知っていた。案の定、部屋に戻った恵里は恵達とともに荷造りを開始。翌朝、こっそり家を抜け出した恵里が道端でカバンを確かめると、中には父・恵文(堺正章)、母・勝子(田中好子)そしておばぁ(平良とみ)からの餞別の品や手紙が納められていた。恵里の新たな旅が始まった。
東京へ向かった恵里(国仲涼子)は一風館に暮らす池端容子(余貴美子)の元を訪ねる。たまたま部屋に空きがあり、アパートの管理人・桐野みづえ(丹阿弥谷津子)は恵里の入居を許可する。恵里はさっそくアパートの中を挨拶回りするが、断固として手土産を受け取ろうとしない城ノ内真理亜(菅野美穂)、引っ越しをなぜか取り止める柴田幸造(村田雄浩)、寡黙な老人・島田大心(北村和夫)など、個性豊かな住人たちに戸惑うばかり。
古波蔵恵里(国仲涼子)の東京生活がスタートした。池端容子(余貴美子)の紹介で、恵里は一風館の近くにある沖縄料理店「ゆがふ」でアルバイトをはじめる。店の主人・兼城昌秀(藤木勇人)はトラック運転手として働いたが、東京になじめない沖縄の人のためにこの店を開いたという。城ノ内真理亜(菅野美穂)や柴田幸造(村田雄浩)も常連だ。ある晩、店に突然、野球部のキャプテンだった与那原誠(宮良忍)が現れる。
大阪で社会人野球をしているはずの与那原誠(宮良忍)は、ふらっと入った沖縄料理店で偶然、古波蔵恵里(国仲涼子)と再会した。実は誠は右肘を故障し野球を諦めていた。手術をするより、野球を諦めて仕事に専念した方がいいと監督から諭されたのだという。その後東京支社の営業部に転勤となったのだという。夢を諦めた誠の気持ちを思い、アパートで落ち込む恵里を池端容子(余貴美子)は「人生の夢はひとつじゃない」と励ます。
与那原誠(宮良忍)は仕事にも東京にも馴染めず苦悶していた。沖縄料理店「ゆがふ」で働く古波蔵恵里(国仲涼子)の前でも「東京はキライだ」と愚痴をこぼす。それを聞いていた東京生まれ、東京育ちの城ノ内真理亜(菅野美穂)は、「帰りたければ帰れ」と誠を一喝する。それからしばらく、店に現れなかった誠が、突然一風館に恵里を訪ねる。誠はすでに会社に辞表を出していた。驚く恵里に誠は「一緒に沖縄に帰ろう」と提案する。
突然、与那原誠(宮良忍)に「一緒に沖縄に帰ろう」と誘われた古波蔵恵里(国仲涼子)は、心揺れるも東京に残ると断る。近日東京を発つことになった誠は、持参した野球のバットを恵里に託し、東京の思い出作りをしたいからと恵里をデートに誘う。快諾する恵里。そのようすを城ノ内真理亜(菅野美穂)が盗み見していた。メルヘン作家の真理亜は恵里を自分の作品のネタにするため、デート当日、恵里と誠のあとをつけることにする。
高級レストランを訪れた与那原誠(宮良忍)と古波蔵恵里(国仲涼子)。恵里が身にまとう服も靴も鞄も、すべて城之内真理亜(菅野美穂)から借りたものだ。その真理亜が先回りしていた店の片隅で、誠は恵里のことをずっと諦めない男が沖縄にいることを忘れないでくれ、と伝える。恵里は誠の気持ちに押しつぶされそうになる。デートを終え、一風館まで送ってもらった恵里。その肩を誠が強く掴む。二人の距離が少しずつ縮まっていく。
デートを終えた夜、借りた服を返しにきた恵里(国仲涼子)は、城之内真理亜(菅野美穂)と池端容子(余貴美子)にその日のデートの様子を報告することになる。誠の誘いを断った理由を、小学校五年生のときに結婚を約束した相手がいるからだと恵里。それを聞いた真理亜は、笑いが止まらなくなり、そんなメルヘンは現実には存在しないと言い放つ。だが恵里は、文也とはいつかきっと再会する運命にあると信じていた。
やりたいことが見つからない恵里(国仲涼子)は「あなたはどんな時が幸せですか?」と周りの人たちに質問して回る。沖縄料理店「ゆがふ」の店長・兼城昌秀(藤木勇人)や飲みにきていた柴田幸造(村田雄浩)、「一風館」の管理人の桐野みづえ(丹阿弥谷津子)、廊下をすれ違った住人・島田大心(北村和夫)…。だが誰もはっきりと答えてくれない。そんな恵里を池端容子(余貴美子)は「自分で見つけるしかない」と突き放す。
小学生の時に文也からもらった思い出のスーパーボール。恵里(国仲涼子)はそれを街中で落としてしまう。必死に探すうちに、店の売上金が入っていたカバンまで盗られる始末。店長の兼城(藤木勇人)は気にするなというが、恵里の気持ちは収まらない。売上金は働いて返すと約束し、仕事終わりに必死にスーパーボールを探すことに。すると、恵里の前にひとりの老人が現れる。一風館に暮らす寡黙な老人、島田大心(北村和夫)だった。
恵里(国仲涼子)の大切なスーパーボールを見つけた島田大心、いつもは寡黙な彼が人前で口を開いたことは一風館でも驚きのニュースとして伝わっていた。一方、沖縄で恵達(山田孝之)はコピーバンドでは満足できず、自分の曲をつくりたいと考え始める。そこで、いつも適当に三線を鳴らしている父・古波蔵恵文(堺正章)に質問し、ようやくひらめいた一曲を、恵達は恵里に聞いてもらいたいと東京に電話をかける。
恵達(山田孝之)の曲を聴いた恵里(国仲涼子)は、心震えて涙が止まらなくなる。弟には音楽の才能があるに違いないと、我がこと以上に喜ぶ。一方、沖縄料理店「ゆがふ」では、店長の兼城昌秀(藤木勇人)が利き腕を怪我してしまう。野球部のマネージャーとしての経験を活かし手当をする恵里。そこへひとりの男(比嘉栄昇)が現れ、何か食べさせて欲しいと頼む。恵里は兼城に代わって得意のソーミンチャンプルーを作ることにする。
アルバイト先の「ゆがふ」の売上金を持って銀行に行く途中、恵里は、初恋の相手・文也にもらった思い出のスーパーボールを公園で落としてしまいました。探しているうちに売上金も盗まれ、途方に暮れる恵里。容子をはじめ一風館の住人の協力でスーパーボールは見つかります。「ゆがふ」の店長は「金はもういいよ」と慰めてくれました。数日後、弟・恵達が「ロックをやりたい」と、恵里の部屋に転がり込んできました。
突然、父・恵文が一風館にやってきました。恵里が心配で見に来たというのです。弟・恵達と恵文の歓迎会が開かれようとしていた夜、母・勝子まで現れました。翌日、古波蔵(こはぐら)家の主催で一風館の住人を招待して、恵里の誕生会が開かれました。「子どもたちは古波蔵家の宝物、よろしくお願いいたします」と頭を下げる両親に心を打たれ、恵里は恵文の三線(さんしん)に合わせて、琉球舞踊を披露します。
恵里はバイト先の「ゆがふ」で、自分が提案したランチ作りに精を出します。雑誌にも掲載されて店は大繁盛しますが、常連客からは心安らぐ場所ではなくなったと反発されます。そのため、店を紹介するテレビの生放送で、恵里はランチを止めると宣言します。落ち込んでいたその日の夜、一風館に大音量が鳴り響きました。肺炎をこじらせた島田がヘッドフォンを耳に当てたまま部屋で倒れていました。恵里は親身になって世話をやきます。
連日、病院のナースステーションに出向き、看護師の聡子に教わりながら、島田を看護する恵里。ある日、退院する子どもを笑顔で見送る看護師たちの姿に心を打たれ、看護師になろうと決意します。少女の頃、小浜島で和也の死に接したことや「命は宝(ぬちどぅたから)」というおばぁの言葉を思い出し、天職を得た気持ちでした。看護大学受験という人生の方向が見え始めたとき、恵里は大学病院の廊下で大人になった文也と再会します。
7年ぶりに文也と再会した恵里。しかし、募る思いを打ち明けることができないまま、一風館に帰ってきます。翌日、文也の気持ちを確かめようと大学病院を訪れた時、文也が美人の同級生・遥に「結婚の約束は子どもの頃の昔話」と話すのを聞いて、ショックのあまり文也からもらったスーパーボールをなくしてしまいます。恵里は失恋の痛手をバネに猛勉強し、看護大学に見事、合格。4年間の寮生活を始めるため、一風館を去るのでした。
4年後、恵里は看護大学を卒業し、一風館に戻ってきました。聡子が看護師長を務める総合病院に就職しますが、そこには研修医として文也も勤務していました。看護師研修で失敗続きの恵里を文也が慰め、担当の少年の死を嘆く文也を恵里が元気づける日々でした。心優しい恵里に、文也は医者をめざした理由を話します。文也には彼女がいると知りながら、子どもの頃以上に思いを募らせ、心では泣きながらも笑顔を絶やさない恵里でした。
恵里の恋に一役買おうと、おばぁが一風館にやってきました。恵里の勤める病院を訪れ、文也と恋敵の遥に会ったおばぁは、恵里の恋の厳しさを悟ります。おばぁの上京は恵里のためだけでなく、自分の初恋の人を探すためでした。長男・恵尚の奔走もむなしく、その人はすでに亡くなっていました。「恵里は自分が傷つくのが恐くて逃げてるんじゃないか。自分の思いをぶつけてごらん」とおばぁは言って沖縄に帰りました。
恵里の勤める内科病棟に文也と恋敵の遥が配属され、動揺した恵里はミスばかりしてしまいます。一方、弟・恵達は音楽プロデューサーの申し出を受け、ソロデビューすることを決意します。そんな恵達の姿や周りの励ましに勇気を得て、恵里はついに思いを文也に伝えますが、突然の告白に文也は戸惑うばかり。傷心の恵里を真理亜が小浜島への旅に誘います。その頃、文也の手もとに恵里がなくした思い出のスーパーボールが偶然戻ります。
小浜島で結婚の約束をした恵里と文也は、真理亜を伴って古波蔵(こはぐら)家に報告に行きました。父・恵文だけが反対し、文也に泡盛の飲み比べを挑みます。そして、先に恵文が酔いつぶれます。「お父さんはわざと負けたんだと思う」と母・勝子とおばぁが言いました。東京に戻って文也の母・静子にも報告に行くと「仕事で一人前になってから結婚した方がいい」と言われます。恵里もその通りだと思い、決意を新たにします。
恵里が一人前の看護師になれたら結婚する、といううわさが広まり、恵里は患者達から励まされます。しかし、新しい担当患者の幸子は、恵里につらく当たります。そんな時、父・恵文と母・勝子が文也の母・静子にあいさつするために上京し、恵文から「看護師は病人にとって太陽のような存在。太陽になりなさい」と励まされます。恵里は無事に退院した幸子に感謝され、看護師長の聡子から「一人前」といわれ、結婚を決意します。
結婚を決めた恵里と文也。東京式か沖縄式かで迷いますが、「ウェディングドレスを着たい」という恵里の一言で東京式の結婚式を挙げました。ところが、次男・恵達から「お母さん、本当は琉装の花嫁姿を見たがっていた」と聞き、恵里と文也、しゅうとめの静子は、古波蔵(こはぐら)家に向かい、沖縄式で式を挙げます。家族のうれしそうな様子を見て、恵里は改めて幸せをかみしめます。帰京した恵里と文也の新居は、一風館でした。
恵里も文也も互いに忙しく、すれ違いの多い新婚生活がスタートしましたが、恵里には後輩ができ、仕事には充実感を感じていました。ある日、島田は縁を切ったはずの息子のために一風館を去ることになりました。部屋には、島田が住人一人ひとりにあてたお礼の手紙が残されていました。一方、メルヘン作家の真理亜が腹痛で入院しますが、盲腸の手術を拒否して脱走します。恵里は真理亜をみつけ、手術で死んだ妹の話を聞きます。
すれ違いの新婚生活も落ち着いた頃、二人は家と病院の仮眠室で、同時に幼い頃に死んだ和也の夢を見ました。数日後、恵里の妊娠がわかり、夢はその知らせだったのかと喜びます。一風館でもお祝いの食事会が開かれ、管理人のみづえは戦時中に失った息子の話をし、子どもは大事に育てるように諭します。恵里が産休に入る前日「看護師は一生できるいい仕事だよ」と声をかける看護師長の聡子。転勤が決まった聡子との別れでした。
恵里の出産日が近づき、一風館の住人はベビー用品を買い始めたり、古波蔵(こはぐら)家では父・恵文が胎教のために三線(さんしん)の演奏を吹き込んだり、周りの期待も高まっていました。文也の勧めもあり、助産師さんに手伝ってもらい家で産む方法を選びました。そして、陣痛が始まりました。おばぁや勝子の励ましで、恵里は無事、男の子を出産しました。みんなの祝福を受けて、文也と恵里は子どもの成長を心から祈るのでした。
古波蔵(こはぐら)家では恵里が帰京することになり、父・恵文は寂しがり、母・勝子は母親としての心得を伝え、おばぁは子守歌を歌うなど、別れを惜しみました。帰京した恵里と和也は、一風館の住人から熱烈な歓迎を受けます。一方、弟・恵達は自作の歌を歌いたいと申し出ますが、音楽プロデューサーから売れないと言われます。そんな時、恵里の同僚・祥子に「夢を追ってほしい」と励まされ、恵達は祥子に「好きだ」と告白します。
職場に復帰した恵里は、ある朝、出勤前に和也が熱を出していることに気づき、子育てをしながら働く難しさを実感します。それでも、新看護師長の秀美から新人指導を任されて張り切っていましたが、新人の麻衣子が辞めてしまいました。恵里は麻衣子の家を訪ね、自分のやり方を押しつけたことを謝ると、麻衣子は戻ってきました。秀美も3人の子どもを育てながら仕事を続けていることを知り、恵里は自分も頑張ろうと心に決めます。
4年の月日が流れて…。ある日、恵里は健康診断で呼び出されますが、軽い貧血でした。看護師長の秀美は「仕事と子育てで大変なんだから、体に気をつけて」と忠告します。一方、一風館では、4年前に出て行った島田が戻ってきて、管理人・みづえにプロポーズしました。弟・恵達は独立を決意し、祥子との仲も進展します。容子は、よく当たると評判の占い師に「今日3回会う人が、あなたの運命の人です」と予言されますが…。
恵里たちの住む一風館に祥子も越してきて、さらににぎやかになりました。ある日、拾った財布を交番に届けようとした和也は、財布の持ち主に呼び止められ、叱責されてしまいます。それ以来、他人を怖がるようになった和也。心に傷を負い、治すには時間がかかると心療内科で言われました。恵里も原因不明の腹部の痛みを覚え、かつての恋敵・遥に診てもらいます。自分も病に冒されていることを知り、恵里はある決意を固めます。
恵里は、和也の病気を治すため、小浜島に行くことを決めました。小浜島で長男の和也を亡くした静子は反対しますが、文也は恵里を応援します。恵里と和也は小浜島へ向かう途中、那覇の古波蔵(こはぐら)家に寄ります。恵里の様子に異変を感じたおばぁは、自分も小浜島に行くことにします。さらに静子や文也もきて楽しい時を過ごしますが、和也の病気は回復しません。そして、ついに恵里が腹部の痛みで倒れてしまいます。
和也が呼びかけても、倒れた恵里は答えません。あたりは暗くなり始め、和也は意を決して助けを呼びに走り出しました。恵里が目を覚ますと、枕元に文也がいました。和也の勇敢な行動で、恵里は東京の病院に運ばれたのです。病気を黙っていたことを皆にわびる恵里。手術前に一度だけ戻った一風館で、文也と恵里は「地域の診療室」のようなことができないかと将来の夢を語り合います。みんなの見守る中、恵里の手術が始まりました…。