かつて写真家であった理子奈は、広告代理店に勤める夫の知久、息子の大地と、東京近郊のマンション暮らしを始め、数年が経とうとしていた。育児をしながら、空いた時間に夫の会社から広告写真の仕事をもらい、生活に追われている。 彼女は東北の被災地出身で、震災で父親を失い、中学生の時に親戚に預けられ、母親とも疎遠な関係になっていた。だからこそか、夢想的に幸せな家庭をつくることに執着してしまい、現実的な夫の知久とぶつかり、噛み合わない日々が続いていた。 そんな折、かつて理子奈に写真を教えた、父親代わりでもあったベテラン写真家の浩志から、戦場に接するベラルーシに難民取材に行くという連絡を受ける。浩志は戦場カメラマンとして経験豊富とはいえ、突然の連絡に驚きと不安を隠せない。 「最近、知久の帰りが遅い…」。理子奈は夫への疑いと不安を強めていた。親友である栄子に相談したが「あんな真面目な人いないよ。心配ないよ」と言われるが、知久への疑いは日に日に募り、うなされたり不安に苛まれることが多くなる。 「幸せな家庭をつくろうとしている私は間違っていないはずだ。なのになぜ? でも…」。 不安を払拭するために、母親の奈津美に数年ぶりに会おうとする理子奈。 やがて彼女は、東北の被災地へ車を走らせていく。しかし日常という歯車はすでに狂い始めていた-。
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