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名残雪

青年の姿をした冬の神様が、夢から醒め、寝起きのかすれた声で何事か囁いている。 十年振りの春帰還に騒然となる大和の中で、時の人である春の代行者について話す者達がいた。陰りのある瞳と高貴な美しさを持つ冬の代行者・寒椿狼星と、そんな彼に仕える執事然とした男、冬の代行者護衛官・寒月凍蝶だ。 二人は四季庁から新たに派遣された石原や、冬の護衛陣と共に創紫の地へ足を踏み入れる。すべては春の顕現が無事になされた地で、雛菊の帰還をこの目で確かめるために。 ところが、四季の代行者の存在を良しと思わない賊の面々が、狼星たちを襲う。 「……全部、俺のせいだ」 「何度言えばわかる?私はお前が大事なんだ」 難なく撃退する狼星たちであったが、十年前に春を失ったことは冬主従の心に深い傷を与えていた。十年前の事件、帰還した春主従の現在の様子。 交錯する思いの中、彼らは念願の桜見物を果たす。 だが、そこでもトラブルに巻き込まれ——。 「目の前に助けられる命がある。今なら救える」 代行者の始まりの物語は、以下のように続く。 ——世界には冬しか季節がなく、冬はその孤独に耐えかね、生命を削り違う季節を創った。 それは春と名付けられた。 春は冬を師と慕い、常にその背を追いかけるようになった、と。

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