私立探偵・増沢磐二(浅野忠信)は、キャバレーの駐車場で一人の男(綾野剛)と出くわす。男は妻で女優の原田志津香(太田莉菜)の車から、雨の中に放り出された。それを見ていた磐二は、男を自分の事務所に連れ帰り、暖かいコーヒーを淹れてやる。
「何の得も無くても、クズを拾ってきてコーヒーを飲ませたいと思う人間だっているんだよ」という磐二の言葉に目を潤ませた男の名は保といった。以来、二人はたびたびバーに一緒に飲みに行くようになる。
数か月後の深夜、血まみれの保が磐二の事務所に現れる。「これから台湾に逃亡するから横浜港まで連れて行ってくれ」という保を磐二は黙って車に乗せる。別れ際に保は言う。「あなたのように、何の見返りも求めず、ただ自分が正しいと思う方を選ぶことのできる人間になりたかった」と。そして、もし台湾なんかに逃げずに警察に行くべきなら僕を呼び止めてくれ、と言い残し、船に向かって歩き出した。磐二は激しく迷うが、何も言わずに港をあとにする。
翌朝、志津香が死体で見つかった。そして磐二は妻を殺した保の逃亡を幇助したという容疑で逮捕された。磐二は手荒い取り調べを受けるが口を割らない。ところが数日後、磐二は突然釈放される。保が台湾で自殺を図ったとの知らせが入ったのだ。磐二は釈放されたが、世間は意外なほど静かだった。金、セックス、血の匂い。ゴシップ欄一面を何週間も飾れるはずのネタだというのに・・・。
警察署の表に出ると、新聞記者の森田が一人待ち構えていた。「おかしいと思いませんか?この事件にはピタリと蓋がされたんです」殺された志