原田邸に呼び出された磐二の前に、原田平蔵が姿を現した。「娘を殺したのは保だ。浮気現場に出くわし衝撃的に志津香を殺した。自首しろと言ったんだが保は台湾に逃げ、怖気づいて自殺した。ただそれだけのことだ」平蔵は磐二にテレビを見せる。そこにはプロレスが映っていた。「日本人は戦争に負けて心にポッカリと穴をあけた。それを埋めるのがテレビだ。仁義、礼節、忠誠、そのような日本人が信じてきたものがあの戦争で灰になった。今、頭をカラッポにしてテレビを見てその不安を忘れればいいのだ」磐二は平蔵に食い下がって言う。「頭をカラッポにしたところで、苦痛は紛れても、この国にとって最も大事なものを奪い潰してしまうじゃないか!」それに対して平蔵は激昂するが、そこに世志乃が割り込んで二人を引き離した。磐二は世志乃に送られて事務所に戻るが、強い敗北感を感じていた。
事務所に戻ると記者の森田が待ち構えていた。森田は、保が元々松井誠一という名前だったが、戦後に戸籍を偽造して城崎保と名乗り、志津香と結婚して原田保になった、さらに保が出征前に結婚していたという情報もつかんでいた。
数日後の夕方、この日は花火大会。事務所に上井戸譲治から電話が入る。「原田保は志津香を殺していない。あの事件の事を君に話す決心がようやくついたから、今すぐ来てくれ」磐二は電話を叩ききって上井戸家に車を走らせた。上井戸家では酔っ払って上機嫌な譲治がいた。譲治は亜以子に飲まさされたらしい。譲治はその時間が楽しく、結局亜以子の魅力には叶わないとつぶやきながら寝入ってしまった。そのときドン